福利厚生 要件

知っておきたい!福利厚生費を正しく扱うための「要件」

従業員エンゲージメントや採用力強化に欠かせない福利厚生。その費用を福利厚生費として適切に計上し、税務上も正しく扱うには要件があります。この記事では、福利厚生費の基本から、非課税として認められる4つの具体的な要件、課税対象になるケース、そして正しい運用のポイントまでを解説。貴社の福利厚生を適切に運用し、従業員と会社双方にメリットをもたらしましょう。

1,福利厚生費とは?

企業にとって、従業員が安心して働ける環境を提供することは重要です。そのために「福利厚生」は不可欠な要素。では、企業活動における「福利厚生費」とは一体何を指し、どのような目的があるのでしょうか?

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福利厚生費の定義と目的

福利厚生費とは、企業が従業員の労働環境向上や生活の安定、健康維持などを目的として提供するサービスや現物支給にかかる費用のことです。これは、給与とは別に支払われる賃金以外の間接的な報酬とも言えます。
福利厚生は大きく分けて、法律で義務付けられている法定福利厚生。企業が独自に設定する法定外福利厚生の2種類があります。

その主な目的は、従業員のモチベーション向上、定着率アップ、優秀な人材の確保、そして企業イメージの向上です。
充実した福利厚生は、従業員が安心して長く働ける環境を作り、結果的に企業の生産性向上にも繋がる重要な投資と言えるでしょう。

2,福利厚生費として認められる4つの要件

福利厚生は従業員と企業双方にメリットをもたらします。その費用を「福利厚生費」として正しく経費計上し、非課税扱いとするためには、満たすべき重要な要件があります。ここでは、特に注意すべき4つのポイントを解説します。

1,全社員に対して公平に提供されていること

福利厚生費として認められるための最も基本的な要件は、その制度が「すべての従業員に対して公平に提供されていること」です。これは、税務上の判断において非常に重要視されるポイントです。

【福利厚生の公平性:判断基準と注意点】

項目公平性〇公平性✕
対象者正社員、パート、アルバイトなど、雇用形態に関わらず、原則としてすべての従業員が対象。特定の役員や部署、職種の人だけが対象になっている。
利用機会誰もが恩恵を受ける機会がある、または利用する合理的な理由がある。特定の役員しか使えない豪華な保養所。特定の部署の社員だけが高額な研修を受けられる。
基準勤続年数や役職など、客観的かつ合理的な基準に基づいた利用条件がある。合理的な理由なく、一部の従業員にのみ提供される過度な手当。

2,社会通念上妥当な範囲の内容・金額であること

福利厚生費として認められるには、その内容や金額が「社会通念上妥当な範囲」であることが求められます。これは、税務署が判断する際の非常に重要な基準の一つです。

【「社会通念上妥当」の判断ポイント】

項目具体的な内容
内容常識的に見て「やりすぎではないか」「個人的な贅沢ではないか」と判断されないこと。
金額一般的な企業の慣例や、同業他社の福利厚生の水準と比較して、著しく高額ではないこと。
目的その福利厚生が、特定の個人ではなく従業員全体の福利厚生として機能しているか。

例えば、あまりにも高額な家賃補助や、頻繁すぎる豪華な慰安旅行、個人的な趣味を支援するような過度な手当などは、税務上問題視される可能性があります。
この「社会通念上妥当」という基準には明確な金額の線引きがあるわけではありません。そのため、判断に迷う場合は、税理士などの専門家へ相談し、アドバイスを求めることが大切です。

3,換金性の高い支給(現金・商品券等)ではないこと

福利厚生費として認められるためには、支給されるものが「換金性の高いものではないこと」が重要な要件です。
これは、現金や商品券、プリペイドカードなど、従業員が自由に使える形で渡されるものは、原則として給与とみなされ、所得税の課税対象となる可能性が高いということを意味します。

ただし、特定の目的のために利用範囲が限定されたチケット。(例:社食でしか使えない食事券、特定の施設でしか使えない旅行券など)で、かつ一定の条件を満たす場合は非課税となる例外もあります。

4,税務上のガイドラインに沿って運用されていること

福利厚生費として費用を計上し、非課税とするためには、その運用が「税務上のガイドラインに沿っていること」が最も重要です。

【税務上のガイドライン遵守の重要性】

  • ・法的根拠 
    福利厚生費の非課税要件は、所得税法や法人税法、関連する通達によって細かく定められています。
  • ・リスク回避 
    ガイドラインを無視した運用は、税務調査時に費用が損金として認められなかったり、従業員に給与課税が発生したりするリスクに繋がります。
  • ・情報確認 
    社員旅行や食事補助、社宅の貸与など、一見福利厚生に見えるものでも、金額の上限や参加者の割合など、具体的な要件が設定されている場合があります。これらのガイドラインは法律や社会情勢によって見直されることもあるため、常に最新の情報を確認することが不可欠です。

自社の福利厚生制度がこれらのガイドラインに合致しているかを定期的に見直し、不安な点があれば税理士や社会保険労務士といった専門家へ積極的に相談することをおすすめします。

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3,課税対象になる福利厚生の例

ここまで、福利厚生費として認められる要件を見てきましたが、これらの要件を満たさない場合、その費用は従業員への「給与」とみなされ、課税対象となります。ここでは、特に注意すべき課税対象となる福利厚生の具体例を見ていきましょう。

一部社員のみに適用

福利厚生費が課税対象となる典型例は、「一部の社員にのみ適用される」ケースです。
ここまでに「公平性」の重要性をお伝えしました。これが欠けていると、その費用は給与とみなされ、課税される可能性が高まります。

例えば、特定の役員のみが利用できる豪華な保養所や、一部の社員だけが高額な研修を受けられる制度は、公平性がないと判断されます。
このような制度は福利厚生ではなく、対象社員への給与として課税され、企業側には源泉徴収義務や社会保険料の負担が増えるリスクがあります。
福利厚生の設計では、公平性を最優先に考えることが非常に重要です。

高額な慰安旅行・頻繁な飲み会

福利厚生として企画されることの多い慰安旅行や社内イベントも、内容によっては課税対象となる可能性があります。特に「社会通念上妥当な範囲」を超える高額なものや、頻繁すぎるものは注意が必要です。

社員旅行の場合、一般的に以下の要件を満たす必要があります。

  • ・旅行期間
    4泊5日以内
  • ・参加割合
    全従業員の50%以上が参加
  • ・費用
    会社負担額が一人あたり10万円程度まで(例外あり)

これらを超過する豪華な旅行や、家族旅行の費用まで会社が全額負担するようなケースは、従業員への給与とみなされ、課税の対象となるでしょう。

また、社内の飲み会も、あまりにも頻繁に行われたり、多額の費用がかけられたりする場合は、接待交際費や給与として扱われる可能性があります。
福利厚生として認められるのは、社内行事の一環として行われる、一般的な懇親会程度だと考えておきましょう。

現金や商品券の支給など

現金やそれに近い換金性の高いものを従業員に支給すると、原則として課税対象となります。これは、従業員が自由に用途を選べるため、実質的に給与と同じと見なされるためです。

【課税対象となる主な支給例】

  • ・現金支給
    住宅手当や資格取得手当などを、現物ではなく現金で一律に支給するケース。
  • ・商品券・ギフトカード 
    デパートの商品券や、特定の店舗に限定されない汎用性の高いギフトカード、電子マネーなど。
  • ・自由に選択できるポイント 
    ポイント制の福利厚生であっても、そのポイントが広範囲な商品やサービスに自由に交換でき、実質的に現金と同等と判断される場合。

これらの支給は、所得税の課税対象となり、企業は源泉徴収を行う義務が生じます。また、社会保険料の計算にも影響を与える可能性があります。福利厚生は、従業員の特定ニーズを満たすサービスや便宜を提供することに主眼を置くべきであり、換金性の高い支給は避けるのが賢明です。

4,非課税として認められる具体例

これまでは、福利厚生費として認められないケースを見てきました。しかし、適切な要件を満たせば、福利厚生は企業にとっても従業員にとっても税務上の大きなメリットとなります。ここでは、非課税として認められる具体的な福利厚生の具体例をご紹介します。

健康診断や社員旅行(一定条件下)

企業が実施する福利厚生の中でも、健康診断社員旅行は、一定の要件を満たせば非課税となる代表的な例です。これらは従業員の健康維持やリフレッシュ、社内コミュニケーションの促進に役立つため、積極的に導入を検討したい福利厚生と言えます。

【非課税となる主な要件】

✅健康診断

  • ・全従業員対象 
    特定の役員や従業員だけでなく、全ての従業員(または希望者全員)が対象であること。
  • ・金額の妥当性
    社会通念上、常識的な範囲内の費用であること。
  • ・会社負担
    費用を会社が直接医療機関に支払うなど、従業員に金銭を支給しないこと。

✅社員旅行

  • ・期間
    4泊5日以内であること。
  • ・参加者
    全従業員の半数以上が参加すること。
  • ・費用
    会社負担額が一人あたり10万円程度まで(旅行内容や社会情勢により判断)。
  • ・私的旅行ではないこと
    旅行の目的が、あくまで慰安や社内親睦であること。

慶弔見舞金・社宅提供などの正しい扱い

慶弔見舞金や社宅の提供も、正しく運用すれば非課税の福利厚生として認められます。これらは従業員のライフイベントや住環境をサポートする上で非常に重要な制度です。

【非課税となる主な要件】

✅慶弔見舞金(結婚祝金、出産祝金、香典など)

  • ・社内規定
    支給基準(対象、金額など)が就業規則や福利厚生規定に明記されていること。
  • ・金額の妥当性
    社会通念上、常識的な範囲内の金額であること。一般的に、給与規定とは別に定められている必要があります。

✅社宅の提供

  • ・賃料の徴収 
    会社が定めた賃料を従業員から徴収していること(家賃の50%以上など、税法上の要件あり)。
  • ・公平性
    特定の従業員にのみ有利な条件で提供されていないこと。
  • ・会社契約
    会社が賃貸借契約を結び、従業員に貸与する形式であること。

規程に基づく通勤手当、食事補助など

通勤手当や食事補助も、適切な規程を設け、運用することで非課税の福利厚生とすることができます。これらは、日々の従業員の通勤・生活を直接的にサポートする身近な制度です。

【非課税となる主な要件】

✅通勤手当

  • ・公共交通機関
    月15万円までの限度額内であれば、実費相当分が非課税です。
  • ・マイカー通勤
    距離に応じて非課税限度額が定められています。
  • ・共通要件
    支給額が就業規則などに明記されていること。

✅食事補助

  • ・会社負担額 
    従業員が食事代の半額以上を負担し、かつ会社負担額が月3,500円(税抜き)以下であること。
  • ・会社手配
    会社が直接、弁当業者などと契約し、現物支給する形式であること。

5,運用上の注意点とまとめ

ここまで、福利厚生費の要件や具体例を見てきました。しかし、制度を導入するだけでなく、正しく運用することも同じくらい重要です。最後に、税務上のトラブルを避けるための運用上の注意点をお伝えします。

5-1社内規程の整備

福利厚生制度を適切に運用するためには、社内規程の整備が不可欠です。
就業規則や福利厚生規程などに、制度の内容、対象者、支給基準などを明確に記載しておく必要があります。

これにより、すべての従業員が公平なサービスを受けられる環境を整えることができ、税務上のトラブルを未然に防ぐことができます。
また、規程が明確であれば、従業員からの問い合わせにもスムーズに対応でき、会社の信頼性向上にも繋がるでしょう。

規程の記載内容に不備があると、せっかくの福利厚生も税務署に認められない可能性があります。
制度を導入する際は、専門家のアドバイスを受けながら、必ず規程を整備しておきましょう。

記録・領収書の保存

福利厚生費として費用を計上するためには、その支出が正当であることを証明する記録と領収書の適切な保存が極めて重要です。
税務調査が入った際、これらの証拠がなければ、せっかくの福利厚生費が認められず、課税対象とされてしまうリスクがあります。

具体的には、いつ、誰に、何のために、いくら支払ったのかが明確にわかるようにしておく必要があります。
例えば、社員旅行であれば参加者名簿や行程表、領収書などを保管します。福利厚生費は多岐にわたるため、経理担当者はもちろん、各部署も協力して、日頃から正確な記録と領収書の管理を徹底しましょう。

必要に応じて専門家への相談を

福利厚生の要件は複雑で、税務上のルールも常に変動します。自社だけで判断するのは難しい場合も多いでしょう。そんな時は、専門家への相談が不可欠です。

株式会社ステラパートナーでは福利厚生や人事制度に精通したプロフェッショナルとして、状況に合わせた最適な制度設計から、複雑な税務上の課題解決まで、幅広くサポートいたします。
適切な制度設計でリスクを回避し、従業員の満足度を高めましょう。

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よくあるご質問

  • 福利厚生費が認められないと、どうなりますか?

    会社は法人税が増え、従業員は所得税などが課税されます。会社も追徴課税やペナルティのリスクがあります。

  • 「社会通念上妥当な範囲」の具体的な金額は?

    明確な金額基準はありません。企業の規模や業界慣習で異なり、社員旅行なら一人あたり10万円程度が目安です。迷ったら税理士にご相談ください。

  • 従業員に商品券をプレゼントできますか?

    原則、福利厚生費にはなりません。商品券や現金など換金性の高いものは給与とみなされ、課税対象となります。

  • 従業員が喜ぶ福利厚生を導入したいです。どうすれば?

    まずは従業員のニーズを把握しましょう。その上で、非課税要件と税務ルールを踏まえて設計します。複雑な場合は、株式会社ステラパートナーのような専門家へご相談ください。