退職金は勤続年数でどう変わる?損しないための完全ガイド
このブログでは、勤続年数が退職金にどう影響するのかという基本から、意外と知らない税金の仕組み、そして受け取り方を工夫して退職金の価値を最大限に引き出す戦略までを徹底解説。
勤続年数と退職金の関係性、税制優遇を活かすタイミング、そして新しい資産形成の選択肢を知ることで、あなたの退職金はもっと賢く、もっと力強い味方になります。
目次
1.勤続年数と退職金の基本を理解しよう
退職金の額を大きく左右する勤続年数。基本的な考え方、カウントの注意点、勤続年数別の退職金平均額の相場観について解説します。退職金制度の最初のステップとして、しっかりと理解しておきましょう。
勤続年数とは?カウントの基準と注意点
勤続年数にはカウントの基準と注意点があります。詳細は以下の通りです。
主なカウント基準
入社日と退職日 | この間の期間をカウントします。月の途中でも1ヶ月と数えることが多いです。 |
休職期間 | 病気や育児などの休職期間は、会社規定により勤続年数に算入されるケースが多いですが、退職金計算で除外されることも。規定確認が必須です。 |
出向・転籍 | 出向は雇用関係が続くため通算されますが、転籍は雇用契約が移るためリセットされ、転籍先で新規カウントです。 |
パート・アルバイトから正社員 | 同じ会社なら通算されることが多いですが、これも会社規定によります。 |
〈注意すべき点〉
●1年未満の端数
会社によって切り捨て、または月単位でカウントするなど対応が異なります。特に支給基準ギリギリの場合に影響します。
●自己都合・会社都合
勤続年数自体は同じでも、退職理由によって退職金の支給額が変わる場合があります。
勤続年数ごとの退職金平均はいくら?相場感を知る
退職金の額は勤続年数で大きく変わります。一般的な相場を見てみましょう。
退職金平均額の目安(大卒・自己都合退職の場合) | |
勤続3年未満 | 支給なし、またはごく少額 |
勤続10年 | 100万〜300万円程度 |
勤続20年 | 400万〜800万円程度 |
勤続30年 | 1,000万〜2,000万円程度 |
定年退職(35〜40年以上) | 1,500万〜2,500万円以上 |
(※)これらは目安です。企業規模、業種、学歴、退職理由などで大きく変動します。
2.勤続年数による退職金の差を具体的に見る
『あと1年勤めていたら…』後悔しないために。勤続年数による退職金の差(10・20・30年)と一時金方式の仕組みを具体的に解説。賢いキャリア計画に役立てましょう。
勤続10年・20年・30年での退職金の受け取り額の違い
●勤続が短いと厳しい現実:10年未満
多くの企業で、勤続3年未満は支給なしかごく少額です。
勤続10年では100万〜300万円程度が目安。まだ本格的な退職金の恩恵を受け始める入口と言えるでしょう。
●安定期から増加へ:勤続10年~20年の「加速」
勤続10年を超え20年に近づくと、退職金の増加ペースは加速します。
会社への貢献度が高まる時期であり、支給率や倍率が上がるため、勤続10年時点から大きく伸び始めます。
勤続20年では400万〜800万円程度が目安。10年時点から大幅に増え、「まとまった金額」としての存在感を増します。
●長年の貢献への報い:勤続20年~30年以上の「跳ね上がり」
勤続20年を超え、30年以上の勤続では、退職金はさらに大きく跳ね上がります。
長年の貢献が高く評価されるためです。
勤続30年では1,000万〜2,000万円程度、定年退職(35〜40年以上)では1,500万〜2,500万円以上が目安。退職後のライフプランに大きく影響するレベルです。
勤続年数が1年違うだけで退職金はどれだけ変わる?
具体的な金額は会社の規定によりますが、例えば以下のような影響が考えられます。
- ●支給条件の境界線
「勤続3年以上で支給」のようなラインがあり、1年下回ると退職金がゼロになることも。 - ●支給率の急上昇
勤続年数が長くなると、退職金の計算に使う「支給率」が特定の節目で大きく上がるため、1年で増える額が跳ね上がることがあります。 - ●計算式の変化
会社によっては、特定の勤続年数を超えると退職金の計算方法自体が変わったり、ベースとなる給与の算定期間が有利になったりすることもあります。
勤続年数と退職金の「一時金方式」の関係とは
退職金の一時金方式は、退職時にまとまった金額を受け取る仕組みです。この方式と勤続年数の関係は非常に深く、多くの場合、勤続年数が長くなるほど、退職一時金は単純な比例関係以上に大きく増えていくように設計されています。
これは、長期勤続者への報奨を手厚くするため、退職金の計算に用いられる「支給率」や「倍率」が、勤続の節目で大きく引き上げられるためです。勤続年数が短い段階では伸びが緩やかでも、特定の年数を超えると、1年あたりの退職金の増え幅が加速するのが一般的。つまり、一時金方式の退職金は、勤続年数が長ければ長いほどその恩恵を最大限に受けられる仕組みになっているのです。
3.勤続年数の数え方・例外・誤解されがちなポイント
勤続年数、実は複雑!育休中や再雇用、退職時期の端数など、見落としがちなポイントを解説。あなたの正確な勤続年数を知るカギです。
休職・育児休業中も勤続年数に含まれる?
病気や怪我、育児、介護などで会社を休む「休職」や「育児休業」の期間は、原則として勤続年数に含まれることが多いです。これは、雇用契約が継続しているためです。
しかし、注意が必要です。多くの会社で、この休職期間は退職金の計算において、基本給や賞与の算定対象から除外されることがあります。つまり、勤続年数としてはカウントされても、退職金の金額に直接反映されない場合があるのです。必ず会社の就業規則や退職金規程で確認しましょう。
定年再雇用・転職時の勤続年数はどう扱われる?
●定年再雇用
定年退職後、同じ会社に「再雇用」されるケースでは、定年時に一度退職金が精算され、雇用契約も新しくなります。そのため、再雇用後の期間は新たな勤続年数としてカウントされるのが一般的です。定年前の勤続年数と再雇用後の勤続年数は別々に扱われます。
●転職時
転職して別の会社に移る場合、前の会社との雇用契約は終了します。そのため、前の会社での勤続年数はリセットされ、新しい会社での勤務期間が新たに勤続年数としてカウントされます。特別な制度(グループ企業間の転籍などで勤続が通算される場合など)がない限り、前の会社の勤続は引き継がれません。
退職時期による勤続年数の端数処理に注意
退職金や有給休暇の支給条件には、「勤続〇年以上」といった明確な基準が設けられています。この「〇年」をクリアできるかどうかで、受け取れる金額が大きく変わることがあります。
例えば、「勤続3年以上で退職金支給」という会社の場合、2年11ヶ月で退職すると退職金はゼロ、というケースも起こり得ます。1年未満の端数(〇ヶ月)をどう扱うかは会社によって異なり、切り捨てられる場合もあれば、月単位でカウントされる場合もあります。
4.退職金の支給方法と税金の基礎知識
退職金の賢い受け取り方、知ってますか?一時金か年金か、手取りが変わる税金計算と申告書のポイントを解説。あなたの退職金を最大限に活かしましょう。
一時金で受け取る場合と年金形式の違いとは
退職金の主な受け取り方には、「退職一時金」と「企業年金」の2つの形式があります。
●退職一時金
退職時にまとまった金額を一括で受け取る方法です。多くの企業で採用されており、退職後すぐにまとまった資金が必要な場合に適しています。税法上は「退職所得」として扱われ、後述する税制優遇の対象になります。
●企業年金
退職後に一定期間、または生涯にわたって分割して年金形式で受け取る方法です。「確定給付企業年金」や「確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)」などがあります。計画的に生活費を賄いたい場合や、まとまったお金の管理に不安がある場合に選ばれます。年金として受け取る場合は「雑所得」として扱われ、公的年金と同様に課税されます。
「退職所得の受給に関する申告書」とは?提出しないとどうなる?
退職金を一時金で受け取る場合に、非常に重要な書類が「退職所得の受給に関する申告書」です。
この書類を退職金の支払いを受ける会社に提出すると、税法上の優遇措置(退職所得控除)が適用され、正しい税額で源泉徴収が行われます。これにより、ほとんどの場合、確定申告が不要になります。
もしこの申告書を提出しなかった場合、会社は退職金に対して一律20.42%(所得税20% + 復興特別所得税0.42%)の税金を源泉徴収しなければなりません。この場合、退職所得控除が適用されないため、本来よりもはるかに多くの税金が差し引かれてしまいます。過払いになった税金を取り戻すには、ご自身で確定申告をする必要があります。
退職金にかかる税金の計算と控除制度の仕組み
退職金は「退職所得」として特別に扱われ、他の所得とは別に計算されます。この際、「退職所得控除」が適用され、勤続年数に応じて控除額が大きくなります。この控除額の範囲内であれば、退職金に税金はかかりません。
●税金の計算方法
退職所得控除を引いた残りの金額に税金がかかります。
1.課税対象額: (退職金の総額−退職所得控除額)÷2
2.税額: 課税対象額に所得税率・住民税率をかけて算出
●控除額の計算方法
勤続20年以下: 40万円×勤続年数 (最低80万円)
勤続20年超: 800万円+70万円×(勤続年数−20年)
【ポイント】
勤続年数に1年未満の端数があれば、1年に切り上げて計算されます。
勤続年数が長いほど控除額が増え、税金は大きく軽減されます。
詳しい計算方法は国税庁HPをご確認ください。 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
5.退職金を最大化するための戦略
退職金、どうせなら最大限に増やしたいですよね。非課税枠を活かすタイミング、自社の制度確認法、老後資金への賢い受け取り方まで、退職金を最大化する戦略を解説します。
勤続年数と非課税枠の関係:ベストな退職タイミングとは?
退職金にかかる税金には、勤続年数に応じて非課税になる「退職所得控除」があります。
たとえば、勤続19年から20年になる場合と、勤続20年から21年になる場合では、後者の方が控除額の伸び率が大きくなります。この特性を理解し、勤続20年や30年といった「節目の年」を意識して退職のタイミングを図ることで、より多くの退職金を非課税で受け取れる可能性があります。
また、勤続年数の端数処理も重要です。1年未満の端数でも1年に切り上げて計算されるため、「ちょうど〇年」で辞めるのと「〇年1ヶ月」で辞めるのとでは、控除額が変わる場合があります。退職を検討する際は、自身の勤続年数が節目の何ヶ月手前か、あるいは何ヶ月超えているかを正確に確認することが、退職金を最大化する戦略の鍵となります。
自分の会社の退職金制度を確認する方法
●就業規則
会社の基本的な労働条件やルールが記載されています。退職金に関する項目が必ずあります。
●退職金規程
多くの会社では、退職金について就業規則とは別に「退職金規程」という詳細なルールを設けています。
●人事部や総務部への問い合わせ
規程を読んでも不明な点がある場合や、自身の具体的なケースでの退職金見込み額を知りたい場合は、直接担当部署に相談するのが最も確実です。
これらの情報源をしっかり確認することで、自身の退職金がどのように計算され、どのタイミングで退職すれば最も有利になるのかを具体的に把握できます。
近年では、勤続年数に関わらず在籍期間中から着実に将来の資金を積み立てられる企業年金制度も注目されています。
例えば、「YUKINつみたてDBプラン」はその一例で、元本が保証されるため、比較的リスクを抑えながら資産形成が可能です。
また、退職時だけでなく、休職時にも積立金を受け取れるなど、柔軟な設計になっているのが特徴です。
こうした制度は、必ずしも長く同じ会社に勤めることが前提ではない、現代の多様な働き方にもマッチする選択肢と言えるでしょう。自身の会社の退職金制度を確認する際には、このような企業年金制度の有無も合わせてチェックしてみるのがおすすめです。

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退職金一時金を老後資金に活かす受け取り方の工夫
退職金は、老後資金として賢く活用したいもの。その「活かし方」には、税金面や制度利用の戦略が重要です。
●税制優遇制度を活用する
退職金を受け取ったら、iDeCoやNISAなど税制優遇のある制度に移すことを検討しましょう。非課税で増やしたり、課税を繰り延べたりでき、退職金を「守る」だけでなく「増やす」戦略につながります。
●他の収入とのバランスを見る
公的年金など他の収入も考慮し、全体で最適な資金計画を立てましょう。
●分割受け取りの検討
会社によっては、退職金を複数年に分けて受け取る選択肢がある場合も。これにより、一度にかかる税負担を分散できる可能性があります。自社の規定を確認してみましょう。
6.まとめ
このブログ記事では、退職金と勤続年数の深い関係から、計算方法、税金、そして最大化戦略までを徹底解説しました。勤続年数を意識した計画と制度理解が、豊かなセカンドライフへの鍵となります。