中退共とiDeCo+を徹底比較
退職金制度を整備しようと情報を集めると、「中退共」と「iDeCo+」という名前を目にする機会が多いのではないでしょうか。
どちらも中小企業が導入しやすい制度として知られていますが、仕組みや向き・不向きはかなり異なります。
この記事では、2つの制度を掛金負担・対象者・受け取り・税制の4つの観点から比較しながら、「自社にはどちらが合うか」を判断する材料を提供します。各制度の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。
中小企業退職金共済(中退共)の詳細はこちらをご覧ください。⇩
iDeCo+の詳細はこちらをご覧ください。⇩
目次
中退共とiDeCo+は何が違うのか
まず、2つの制度の基本的な性格を整理します。
中退共(中小企業退職金共済)
国(中退共本部)が運営する退職金制度です。
会社が毎月掛金を負担し、従業員が退職した際に退職金として支払われます。制度の運営主体が国であるため、安心感と信頼性が高く、中小企業の退職金制度として広く普及しています。
iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)
従業員が個人で加入するiDeCoに、会社が掛金を上乗せできる制度です。
あくまで個人の資産形成制度であるiDeCoをベースにしているため、転職しても資産を継続できる点が特徴です。
一見似ているようで、根本的な設計思想が異なります。
「会社が従業員に退職金を準備する制度」が中退共、「従業員の個人的な資産形成を会社としてサポートする制度」がiDeCo+というイメージです。
比較表
| 比較項目 | 中退共 | iDeCo+ |
|---|---|---|
| 運営主体 | 国(中小企業退職金共済事業本部) | 運営管理機関(金融機関) |
| 会社の掛金負担 | あり(会社が全額負担) | あり(従業員掛金に上乗せ) |
| 従業員の掛金 | なし | あり(自ら拠出が前提) |
| 任意加入 | ×(対象者全員加入が原則) | 〇(iDeCo加入者のみ) |
| 役員加入 | × | △ |
| 掛金の上限 | 月額30,000円 | 合計月額23,000円 (2026年6月時点) |
| 元本保証 | 〇 | ×(運用次第) |
| 社会保険料への影響 | なし | なし |
| 受取可能時期 | 退職時のみ | 原則60歳以降 |
| 短期退職時の減額 | あり(3年未満で減額) | なし |
| 税制優遇(会社) | 全額損金算入 | 全額損金算入 |
| 税制優遇(従業員) | なし | 全額所得控除 |
「掛金負担」の違い
中退共:会社が全額負担
中退共では、掛金は会社が全額負担します。従業員は一切負担しません。
掛金の月額は5,000円〜30,000円の範囲で設定でき、従業員ごとに異なる金額を設定することはできません(同じ事業所内では原則として同一金額)。
会社が全額負担するため、「確実に従業員全員に退職金を積み立てられる」という安心感がある一方、従業員数が増えるほど会社の費用負担も増加します。
iDeCo+:会社が上乗せ、従業員も拠出
iDeCo+では、従業員が自ら拠出するiDeCoの掛金に、会社が追加で掛金を上乗せします。
会社と従業員の掛金合計が月額23,000円以下(2026年12月改正後は引き上げ予定)の範囲で設定します。
従業員自身も掛金を拠出するため、「自分のお金も積み立てている」という当事者意識が生まれやすいのが特徴です。ただし、iDeCoに加入していない従業員には適用できないため、会社としてカバーできる従業員が限られる点に注意が必要です。
「対象者」の違い
中退共:全員加入が原則・役員は不可
中退共は、原則として対象となる従業員全員を加入させる必要があります。「希望する社員だけ」という選択的な運用は認められていません。
また、役員は加入できません。「経営者自身の退職金も一緒に準備したい」という場合、中退共では対応できないため、別途手段を検討する必要があります。
iDeCo+:iDeCo加入者のみ・役員は要確認
iDeCo+の対象となるのは、iDeCoに加入している「従業員」と定義されています。
公式サイトでは「厚生年金被保険者である従業員」と明記されているため、役員が対象に含まれるかどうかは事前に確認が必要です。iDeCoへの加入可否も含め、詳細は金融機関またはiDeCo公式サイトでご確認ください。
「受け取り」の違い
中退共:退職時のみ・3年未満は減額あり
中退共の積立金は退職時にのみ受け取ることができます。
育休・介護休業などの休職時に受け取ることはできません。
また、加入から3年未満で退職した場合は支給額が減額されます(1年未満は支給なし)。短期離職が多い業種や職場では、制度の効果が限定的になる可能性があります。
iDeCo+:原則60歳以降
iDeCo+はiDeCoの枠組みを活用するため、積み立てた資産は原則60歳まで受け取ることができません。
退職しても、60歳になるまで引き出せない点は大きな制約です。
一方、転職しても資産を継続できる(ポータビリティが高い)点はiDeCo+の強みです。
出典:iDeCo+(イデコプラス)のご案内(厚生労働省)
「税制」の違い
中退共の税制メリット
- 会社側
掛金は全額損金算入できます。また、新規加入・掛金増額の際には国から助成金が支給されるケースがあります(一定条件あり)。 - 従業員側
退職時に受け取る退職金には退職所得控除(国税庁)が適用されます。在職中に特別な税制メリットはありませんが、受け取り時の税負担は大幅に軽減されます。
iDeCo+の税制メリット
- 会社側
事業主掛金は全額損金算入できます。中退共と同様、税務上の処理はシンプルです。 - 従業員側
従業員自身が拠出する加入者掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。在職中から所得税・住民税の節税効果が生まれる点は、中退共にはないiDeCo+ならではのメリットです。受け取り時も、一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除が適用されます。
こんな会社には中退共が向いている
- ・全従業員に一律の退職金制度を整備したい
- ・従業員にiDeCoへの加入を促す余力がない
- ・短期離職が少なく、長期雇用が中心の職場
- ・国が運営する安心感・信頼性を重視したい
- ・制度導入の手間を最小限にしたい
こんな会社にはiDeCo+が向いている
- ・従業員の自主的な資産形成を会社として支援したい
- ・すでにiDeCoに取り組んでいる従業員が多い
- ・従業員に在職中の節税メリットを提供したい
- ・転職を前提としたキャリア形成を支援したい
両制度では解決できない課題はYUKINへ
中退共・iDeCo+はそれぞれ優れた制度ですが、次のような課題は解決しにくい場合があります。
- ・会社の掛金負担なしで制度を導入したい
- ・育休・介護休業中に積立金を使えるようにしたい
- ・社会保険料の軽減効果も同時に得たい
- ・元本保証で、かつ受け取り時期を柔軟にしたい
こうした課題に応えられるのが、YUKINつみたてDBプランです。
会社の追加的な掛金負担が原則不要の選択制の仕組みで、退職時・休職時に受け取ることができます。
中退共やiDeCo+と比較しながらYUKINも検討することで、自社の状況に最も合った制度を見つけられます。
YUKINと他制度の違いはこちらをご覧ください。⇩
まとめ
中退共とiDeCo+の主な違いをまとめると、次のようになります。
中退共は「会社が全額負担・全員加入・退職時受け取り」というシンプルな設計で、確実に全従業員をカバーしたい会社に向いています。
iDeCo+は「iDeCo加入者への上乗せ・役員も対象・従業員の節税メリットあり」という特徴で、従業員の自主的な資産形成を後押ししたい会社に向いています。
どちらが正解かは会社の状況によって異なります。まずは自社の課題・従業員の構成・将来の制度拡充の可能性を整理した上で、どちらが自社のニーズに合うかを検討してみてください。
その他の退職金制度についてはこちらをご覧ください。⇩

YUKINつみたてDBプラン
会社の掛金負担ゼロで導入できる、中小企業向けの選択制退職金制度です。社会保険料の削減効果もあり、企業・従業員の双方にメリットがあります。
【監修】今鶴 慶一朗
ゆうきん企業年金基金 常務理事
株式会社ステラパートナー 執行役員
中小企業の退職金制度の設計・導入支援に携わり、選択制確定給付企業年金(YUKINつみたてDBプラン)の普及を通じて、従業員の資産形成と企業の人材戦略を支援
よくあるご質問
中退共に加入している場合、iDeCo+も導入できますか?
はい、併用可能です。
ただし、iDeCo+導入後にYUKINなどの確定給付企業年金を追加導入する場合はiDeCo+の要件を満たさなくなる点に注意が必要です。従業員がiDeCoに加入していない場合、iDeCo+は導入できますか?
iDeCo+の上乗せ掛金は、iDeCoに加入している従業員のみに拠出できます。
加入者がいない状態で導入しても意味がないため、先に従業員のiDeCo加入を促す必要があります。どちらの制度も向いていない場合はどうすればいいですか?
YUKINつみたてDBプランという選択肢があります。
会社の掛金負担なし・元本保証・休職時受け取り可能という特徴を持ち、中退共・iDeCo+では解決しにくい課題に対応できます。












