企業型DCとiDeCo+を徹底比較

企業型DCとiDeCo+を徹底比較

「企業型DCとiDeCo+、どちらを導入すればいいの?」

退職金制度の整備を検討する経営者・人事担当者から、こうした疑問をよく耳にします。

どちらも確定拠出年金(DC)の仕組みを活用した制度ですが、会社の関与度・導入コスト・対象者・掛金の上限などが大きく異なります。

「なんとなく企業型DCの方が本格的そう」「iDeCo+は手軽そう」

というイメージだけで選んでしまうと、自社の状況に合わない制度を導入してしまう可能性があります。

企業型DCとiDeCo+、何が違うのか

まず、2つの制度の基本的な特徴を整理します。

  • ■企業型DC(企業型確定拠出年金)
    会社が退職金制度として導入し、従業員のために掛金を拠出する制度です。従業員が運用商品を自ら選んで資産形成を行い、会社は運営管理機関(金融機関)との連携や投資教育の実施が求められます。
  • ■iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)
    従業員が個人で加入するiDeCoに、会社が掛金を上乗せできる制度です。あくまでiDeCoの枠組みを活用するため、会社が金融機関と直接契約を結ぶ必要はありません。従業員がiDeCoに加入していることが前提条件です。

確定拠出年金(DC)についてはこちらをご覧ください。⇩

iDeCo+についてはこちらをご覧ください。⇩

比較表

比較項目企業型DCiDeCo+
導入コスト運営管理機関への手数料・投資教育の負担あり特別な費用なし
対象企業制限なし従業員300人以下・企業年金未実施
対象者全従業員(役員も可)iDeCoに加入している従業員
会社の掛金負担全額拠出上乗せ分の拠出
掛金上限月額55,000円*1合計月額23,000円*2
運用リスクありあり
投資教育努力義務あり義務なし

※1 他の企業年金がない場合。DBなどがある場合は(55,000円-他制度掛金相当額)
※2 2026年12月改正予定

「会社の関与度・導入コスト」の違い

企業型DC:制度設計から運営まで会社が担う

企業型DCを導入するには、まず会社が運営管理機関(銀行・証券会社・保険会社など)を選定し、契約を結ぶ必要があります。運用商品のラインナップ選定、規約の整備、加入者への投資教育、毎月の掛金管理——これらをすべて会社が担います。

導入コストも無視できません。運営管理機関への初期費用、毎月の口座管理手数料(加入者一人あたり数百円程度)、投資教育の実施費用などが継続的に発生します。担当者には制度の知識も求められるため、人事・総務の負担はそれなりに大きくなります。

制度の自由度が高い分、「本格的な退職金制度を自社ブランドとして整えたい」「掛金額を大きくとりたい」という会社には向いています。ただし、それ相応の準備と覚悟が必要です。

iDeCo+:既存のiDeCoに上乗せするだけ

iDeCo+の仕組みはシンプルです。従業員が個人でiDeCoに加入しており、かつ会社がiDeCo+の手続きを行うことで、会社が従業員の掛金に上乗せして拠出できるようになります。

会社が金融機関と新たに契約を結ぶ必要はなく、投資教育の義務もありません。手続きの窓口はiDeCoの運営機関(国民年金基金連合会)になります。担当者の業務負担は企業型DCと比べてはるかに軽く、小規模な会社でも取り組みやすい制度です。

ただし、「従業員がiDeCoに加入していること」が前提です。加入していない従業員には会社からの上乗せができないため、効果が社内で不均一になりやすいという現実もあります。

「対象者・加入条件」の違い

企業型DC:全従業員と役員が対象

企業型DCは、会社が規約を設定すれば全従業員(一定の条件を設けることも可能)と役員が加入対象となります。正社員だけでなく、要件を満たせばパートや契約社員も対象に含めることができます。

会社として制度を整備する以上、「この制度は全員のためにある」というメッセージを発信できるのが強みです。採用時の訴求力にもなります。

iDeCo+:iDeCo加入者限定・300人以下の中小企業のみ

iDeCo+を利用できるのは、従業員数300人以下の中小企業に限られます。また、上乗せの恩恵を受けられるのはすでにiDeCoに加入している従業員のみです。

iDeCoへの加入は従業員個人の判断に委ねられるため、「加入している人には会社が上乗せするが、加入していない人は恩恵ゼロ」という状況が生まれます。制度の公平性という観点では、全員加入を前提とした企業型DCの方が優れています。

また、iDeCo+は企業年金制度(確定給付企業年金・企業型DCなど)が実施されていないことが利用条件です。YUKINのような確定給付企業年金を導入している会社は、iDeCo+と併用することはできません。

「掛金・拠出限度額」の違い

掛金の上限額は、両制度で大きく異なります。

企業型DCの場合

他の企業年金制度がない場合は月額55,000円まで会社が拠出できます(確定給付型の企業年金を併用している場合は月額27,500円)。掛金は全額会社負担で、損金算入が可能です。

iDeCo+の場合

従業員本人が拠出するiDeCoの掛金と会社の上乗せ分を合計した金額の上限は月額23,000円です。企業型DCと比べると拠出できる金額がかなり限られます。

「毎月しっかり積み立てて、従業員に大きな退職金を用意したい」という会社には、拠出限度額の観点からも企業型DCの方が適しています。

「運用リスク」の違い

両制度とも運用リスクは従業員が負う

企業型DC・iDeCo+はどちらも確定拠出年金(DC)の仕組みを使います。運用商品(投資信託・定期預金など)の選択は従業員個人が行い、運用結果によって受け取れる金額が変わります。会社が受け取り額を保証する義務はありません。

この点が、確定給付年金(DB)との根本的な違いです。DBは会社(または基金)が給付額を約束しますが、DCは「いくら積み立てたか」「どう運用したか」によって結果が変わります。

企業型DCには投資教育の努力義務がある

企業型DCを導入した会社には、加入者への継続的な投資教育が努力義務とされています(確定拠出年金法第22条)。「どの運用商品を選べばいいのか」を社員が自分で判断できるよう、会社がサポートする責任を負うわけです。

教育の内容・方法は会社の裁量に委ねられていますが、外部の研修サービスを使う場合はコストも発生します。「投資に慣れていない従業員が多い」「教育の準備が負担」と感じる会社も少なくありません。

iDeCo+にはこの義務がないため、運営負担という点では iDeCo+に軍配が上がります。ただし、義務がないからといって放置すれば、従業員が制度をうまく使いこなせない可能性もあります。

「受け取り」の違い

両制度とも、原則として60歳以降でなければ受け取ることができません(通算加入期間の条件あり)。退職したとしても、60歳になるまで原則として引き出せない点は、YUKINのような確定給付型の退職金制度と大きく異なるポイントです。

転職した場合、企業型DCの積立金は別の企業型DCやiDeCoに移換(ポータビリティ)できます。iDeCo+はそもそもiDeCoの枠組みのため、転職後もiDeCoとして継続できます。どちらも持ち運びのしやすさという点では優れています。

「税制」の違い

税制優遇の仕組みは、両制度でほぼ同じです。

  • ①拠出時
    会社が拠出した掛金は全額損金算入(法人税の節税効果)。従業員本人が拠出する場合も全額所得控除となり、所得税・住民税が軽減されます。
  • ②運用中
    運用益は非課税(通常は約20%の税金がかかるところ、DCでは非課税で再投資される)。
  • ③受け取り時
    一時金として受け取る場合は退職所得控除が適用され、年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。

税制上の優遇という観点では、企業型DCもiDeCo+も同等です。違いがあるとすれば、拠出限度額の大きさです。上限が高い企業型DCの方が、税制優遇の恩恵を最大限に活用しやすいといえます。

両制度は「併用」はできるか

企業型DCとiDeCo+は併用できない

企業型DCとiDeCo+は、併用できません。iDeCo+は「企業年金制度が実施されていない会社の従業員」を対象とした制度であるため、企業型DCを導入している会社の従業員はiDeCo+の対象外となります。

iDeCo+導入時の留意事項|iDeCo公式

企業型DC加入者はiDeCoにも加入できる

企業型DCに加入している従業員は、マッチング拠出(従業員が上乗せ拠出できる制度)とiDeCoはどちらか一方しか選べません。会社がマッチング拠出を採用していない場合、従業員はiDeCoに別途加入できます。

こんな会社には企業型DCが向いている

企業型DCが向いているのは、次のような会社です。

  • ・従業員が多く、制度として広く展開したい
    300人を超えていても導入でき、全従業員を対象にできます。「会社として退職金制度を整備した」という対外的なメッセージにもなります。
  • ・掛金を多く積み立てたい
    月額55,000円まで拠出できるため、「手厚い退職金を用意したい」「役員の退職金準備も含めて大きく積み立てたい」という場合に適しています。
  • ・制度の自由度・カスタマイズ性を求める
    運用商品のラインナップ、規約の設計、マッチング拠出の有無など、自社の状況に合わせた設計が可能です。
  • ・人事担当者が一定のリソースを確保できる
    投資教育や制度運営に対応できる体制がある会社であれば、企業型DCの強みを活かせます。

こんな会社にはiDeCo+が向いている

iDeCo+が向いているのは、次のような会社です。

  • ・従業員300人以下で、導入・運営コストを抑えて退職金支援をしたい
    新たな金融機関との契約や規約整備が不要なため、低コストで退職金支援をスタートできます。
  • ・iDeCoに加入している従業員が一定数いる
    そもそもiDeCo+の恩恵を受けられるのはiDeCo加入者だけです。社内で加入者が多ければ、制度の効果を広く発揮できます。
  • ・担当者の業務負担を最小限にしたい
    新たな金融機関との契約や投資教育の義務がないため、少ない手間で退職金支援ができます。
  • ・掛金額が少額でもよい
    月数千円から上乗せでき、会社のコスト感に合わせて柔軟に設定できます。

両制度を検討する前に確認したいこと

企業型DCかiDeCo+かを選ぶ前に、まず以下を確認しておくとスムーズです。

  • 1,従業員数は何人か?
    300人を超えている場合、iDeCo+は選択肢から外れます。
  • 2,すでに他の企業年金制度を導入しているか?
    確定給付型の企業年金が実施済みの場合、iDeCo+は利用できません。
  • 3,毎月いくら拠出したいか?
    月額23,000円を超えて積み立てたい場合は、企業型DCの方が適しています。
  • 4,担当者のリソースはあるか?
    投資教育や制度運営の負担に対応できるかどうかも、現実的な判断軸になります。
  • 5,全従業員に公平に提供したいか、それとも希望者のみか?
    全員を対象にしたい場合は企業型DC、希望者のみでよい場合はiDeCo+でも対応できます。
  • 6,iDeCo+を長期的に続けられるか?
    iDeCo+は導入・変更・廃止のいずれにも労使合意が必要です。また、導入後に企業型DCへ移行することはできません。「とりあえず試してみる」感覚で始められる制度ではないため、長期的な運用を前提に検討することが重要です。

まとめ

企業型DCとiDeCo+は、どちらも税制優遇が手厚く、従業員の老後資産形成を支援するための有力な選択肢です。しかし、その内容は大きく異なります。

企業型DCは「会社が制度を作る」自由度と拠出限度額の大きさが魅力ですが、導入・運営コストや投資教育の義務があります。iDeCo+は手軽に始められる反面、対象者が限定され、拠出できる金額も小さい。

どちらが正解かは、会社の規模・従業員構成・担当者のリソース・掛金の水準によって変わります。「比較表を眺めただけでは判断しにくい」という場合は、制度選択の前に専門家に相談することをおすすめします。

なお、もし「元本保証があること」「会社の掛金負担ゼロで導入したいこと」「退職時・休職時に受け取れる柔軟性がほしいこと」を優先するなら、確定給付型のYUKINつみたてDBプランも選択肢に加えてみてください。

YUKINつみたてDBプランとの違いを詳しく見る

その他の退職金制度についてはこちらをご覧ください。⇩

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よくあるご質問

  • 企業型DCとiDeCo+は同時に利用できますか?

    できません。iDeCo+は「企業年金制度が実施されていない会社の従業員」が対象のため、企業型DCを導入している会社では利用できません。

  • iDeCo+を導入しても、加入していない従業員は損をしますか?

    iDeCo+の恩恵は加入者のみに及びます。未加入の従業員には会社からの上乗せがないため、制度の公平性という観点では課題になりえます。全従業員に一律で退職金を提供したい場合は、企業型DCや確定給付型の制度の検討をおすすめします。

  • iDeCo+の「従業員300人以下」は、パートや派遣社員を含みますか?

    カウントの基準は「厚生年金被保険者数」です。正社員に限らず、パートやアルバイトでも厚生年金に加入していればカウントされます。

  • 60歳前に退職した場合、積立金はどうなりますか?

    企業型DCの場合、退職後は別の企業型DCまたはiDeCoへ移換して継続管理します。iDeCo+の場合も同様に、iDeCoとして継続できます。どちらも60歳まで原則引き出せません。退職時に受け取りたい場合は、確定給付型の退職金制度の方が柔軟です。

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