約115名|半導体技術者の労働者派遣、ソフトウェア開発|(東京都)
派遣業界の退職金課題を解決!株式会社人財ソリューションが描く、派遣社員のための新たな退職金制度

東京都台東区に本社を構える株式会社人財ソリューション(以下、同社)様の事例をご紹介します。
同社は半導体業界を中心とした求人・求職サービスを提供しており、半導体関連に特化した技術者の労働者派遣、請負、職業紹介業務を主要事業とし、ベトナムの若手エンジニアを活用したソフトウェア開発、システム開発も手がけています。
今回、同社の代表を務める室伏社長にお話を伺いました。
事業所名:株式会社人財ソリューション
従業員数:115名(2024年4月)
加入者数:32名(制度対象者数:94名、加入率:34%)
所在地:東京都台東区
公式サイト:https://jinso.co.jp/
退職金制度導入への道のり:これまでの課題と本音
同社は2003年の設立以来、従業員数100名を超える規模に成長していましたが、これまで退職金制度を導入していませんでした。その理由について、室伏社長は、派遣業界特有の事情を挙げます。
「派遣会社なので短期で契約終了になることも多く、掛金が欠けてしまうことが発生してしまう。特に中退共(中小企業退職金共済)は短期退職での退職金の減額などがあるため、派遣会社には合わない制度だと思っていた」と室伏社長は説明します。
親会社が中退共を導入していたため、制度自体は認識していたものの、派遣社員の働き方を考えると、従来の退職金制度は適用が難しいと判断していたのです。室伏社長は当時を振り返り、「派遣会社に合う制度はないと思っていた」と語っています。
YUKINを導入した最大の理由は「元本保証」
このような状況下で、同社がYUKIN導入を決めた最大の決め手は、その「元本保証」の仕組みでした。
室伏社長は、「YUKINは、加入期間に関わらず『元本保証(確定給付)』となるため、拠出したお金が欠けてしまうことがない。派遣会社特有の懸念を解消できると思った」と語っています。
また、YUKINの大きな特徴である「選択制」も重要なメリットでした。従業員一人ひとりが自分のニーズに合わせて加入や掛金額を選べるため、従業員の満足度向上に繋がると考えたのです。
企業側にとっても、退職金原資と給与原資を分けて考える必要がないため、予算管理がシンプルになるという利点がありました。
さらに、同社には65歳以上の従業員が多いという特徴があり、「在職老齢年金」への影響も重要な検討要素でした。室伏社長は、「給与を支払ったとしても在職老齢年金を減らされてしまうが、YUKINに積み立てることで解決できると思った」と述べ、この点も導入の大きな後押しとなったようです。
導入の目的と背景
同社におけるYUKIN導入の目的と背景を整理すると、次の3つが挙げられます。
① 掛け捨てとならない退職金制度構築
これは前述のとおり、中退共等であれば発生してしまう「短期退職での掛け捨て、元本割れ」のない、退職金制度構築が求められていました。確定給付企業年金であるYUKINはまさに、そのニーズに合致した制度でした。
② 従業員の手取り向上
YUKINは選択制の退職金制度です。
選択制とは、会社が毎月拠出する掛金を、退職金として積み立てるか、給与として受け取るか選択できる制度です。なお、退職金掛金の原資は、制度導入前の給与原資から調整して確保します。
これにより、退職金として拠出する金額には税金や社会保険料が計算されないため、従業員は効率よく資産形成できます。そして、退職金受取時には退職所得控除が適用されます。
YUKINの掛金拠出による税金・社会保険料削減効果についての詳細はこちら
③ 在職老齢年金問題の解決
同社では、65歳以上の従業員が多く在籍しており、在職老齢年金への影響が退職金制度を検討する上で重要な要素でした。室伏社長は、「給与を支払ったとしても在職老齢年金を減らされてしまうが、YUKINに積み立てることで解決できると思った」と語っています。
在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら働く60歳以上の人が、給与と年金の合計額が一定額を超えると、年金の一部または全額が支給停止される制度です。
YUKINの「選択制」の仕組みにより、従業員は実質的に、給与として受け取るかわりに退職金として積み立てることを選択できます。これにより、給与額を調整し、在職老齢年金の支給停止額を抑える効果が期待できます。
この仕組みは、特にシニア層の従業員にとって大きなメリットとなります。年金が減額されることなく、効率的に資産形成ができるため、モチベーションの向上や長期的な就労意欲の維持にもつながると考えられます。
導入前の懸念と対応
室伏社長は、YUKIN導入前にいくつかの懸念を抱えていたと語っています。
一つは、基金の名称に関するものでした。当時、「遊技関連企業年金基金」という名称だったため、「遊技関連企業向けの企業年金制度を自社が導入できるのか、従業員から不安の声が上がるのではないか」という懸念があったそうです。
しかし、この名称は基金設立当初に遊技関連業界の企業が多く導入したことによるもので、2025年7月1日からは「ゆうきん企業年金基金」に改称され、あらゆる業種・規模の企業が対象となっています。
また、もう一つの懸念は、YUKINが選択制であることでした。室伏社長は、「多くの方が利用してくれないと、福利厚生としての意味が薄れてしまうのではないか」と心配していました。
しかし、結果的には杞憂に終わります。対象者94名のうち32名(加入率34%)の従業員が加入し、福利厚生としてしっかりと機能していることが証明されました。
導入後の成果と従業員の反応
YUKIN導入後、従業員からは好意的な反応が寄せられました。
室伏社長は、「制度導入に対して従業員から感謝されたことがあります。『在職老齢年金への影響や社会保険料削減、節税ができる制度ができて嬉しい』との声がありました」と話しています。
特に、高齢の従業員からの反応は非常に良く、「在職老齢年金の部分でメリットを感じてくれて、高い金額をかけてくれる方がいる」という具体的な成果も出ています。
室伏社長は、導入目的の達成度についても「ある程度は達成できています。在職老齢年金の部分でメリットを感じてくれて、高い金額をかけてくれる方がいるので良かった。」と評価しており、YUKINが従業員のニーズに合致し、期待通りの効果を発揮していることが伺えます。
今後の課題と改善要望
現在のYUKIN加入率は34%ですが、室伏社長は「もう少し加入してくれる社員が増えれば、さらに効果を感じることができて目的の達成度は高まる」と語り、さらなる加入率の向上を目指しています。
また、運用面ではシステムの使いやすさに関する要望も挙がっています。
「システムへのログインをもっと簡易的なものにできたらとても嬉しいです。導入後、システムに対しての問い合わせが多く、社員番号を把握していない社員が多いため問い合わせが多発しました」とのこと。具体的には、生年月日のみでのログインや、メールアドレスによる個別ログイン情報配信といった改善が希望されています。
これらの要望を受け、セキュリティを確保しつつ、よりスムーズな利用環境の整備が今後の課題として挙げられます。
【まとめ】派遣業界への示唆と今後の展望
以上、株式会社人財ソリューション様の事例は、派遣業界における退職金制度導入の新たな選択肢を示しています。
元本保証という特徴により、短期契約が多い派遣業界でも安心して導入できる制度として、今後の普及が期待されます。
選択制DBの最大の強みは、従業員個々のライフプランや経済状況に応じた柔軟な制度設計が可能である点です。加入するかしないか、どの程度の掛金にするかを各自が選択できるため、多様な働き方をする派遣社員のニーズに応えることができます。
また、企業側にとっても、従来の退職金制度のように退職金原資を別途確保する必要がなく、給与として支払う原資をそのまま制度に活用できるため、資金繰りや予算管理の負担が軽減されるという実務上のメリットも大きな魅力です。
高齢従業員の多い企業や、コスト負担を抑えて福利厚生拡充を図りたい企業にとって、選択制DBは特に有効な選択肢となるでしょう。今後、導入から時間が経過した際の詳細な効果測定を通じて、その価値がさらに明確になることが期待されます。