柔軟な働き方支援とは?

柔軟な働き方を支援する制度とは?|企業が知っておきたい法律上の義務と導入のポイント

育児や介護との両立、副業・兼業、テレワークなど、従業員の働き方に対するニーズは多様化しています。

企業には、法律に基づいて整備しなければならない制度がある一方、会社の判断で導入できる制度もあります。

この記事では、柔軟な働き方を支援する主な制度について、法的な位置づけ、対象者、制度内容、会社に求められる対応を解説します。

柔軟な働き方支援の全体像

柔軟な働き方を支援する制度は、大きく次の4つに分けられます。

区分主な制度例主な法令・指針
働く時間の柔軟性フレックスタイム制、短時間勤務、時差出勤労働基準法、育児・介護休業法
働く場所の柔軟性テレワーク、在宅勤務、サテライトオフィス勤務厚生労働省テレワークガイドライン、育児・介護休業法
休業・休暇育児休業、介護休業、子の看護等休暇、介護休暇育児・介護休業法
働き方の多様性副業・兼業厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

重要なのは、すべての制度が会社の任意ではないという点です。

育児や介護に関する制度の多くは法律上の義務ですが、一般的なテレワークや、育児・介護以外を理由とする短時間勤務などは、基本的に会社の判断で導入できます。

短時間勤務・柔軟な勤務制度

3歳未満の子を養育する従業員

会社は、3歳未満の子を養育する一定の要件を満たした従業員に対して、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む短時間勤務制度を設けなければなりません。これは、育児・介護休業法に基づく会社の義務です。

ただし、労使協定を締結することで、次のような従業員を対象外にできる場合があります。

  • 継続雇用期間が1年未満の従業員
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
  • 業務の性質などから短時間勤務制度の適用が困難な業務に従事する従業員

業務の性質などから短時間勤務制度を利用させることが難しい場合には、会社は代替措置として、フレックスタイム制、時差出勤、テレワーク、保育施設の設置・運営などの制度を整備する必要があります。

3歳から小学校就学前までの子を養育する従業員

2025年10月1日から、3歳以上で小学校就学前の子を養育する従業員に対して、「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じることが会社に義務づけられています。

会社は、次の5つの措置から2つ以上を選択して整備しなければなりません。

  1. 始業時刻等の変更
  2. テレワーク等
  3. 保育施設の設置・運営等
  4. 養育両立支援休暇の付与
  5. 短時間勤務制度

従業員は、会社が整備した2つ以上の措置の中から、1つを選んで利用できます。

また、会社は、従業員の子が3歳になる前の一定期間に、次の事項を個別に周知し、制度利用の意向を確認しなければなりません。

  • 会社が整備した措置の内容
  • 制度の申出先
  • 残業免除、時間外労働の制限、深夜業の制限に関する制度

単に制度を用意するだけでなく、対象者に個別に案内するところまでが会社の義務となっています。

介護をする従業員

要介護状態にある家族を介護する従業員についても、会社は柔軟な勤務制度を設けなければなりません。

会社は、次の措置から1つ以上を選択して整備します。

  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制
  • 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
  • 介護サービス費用の助成その他これに準ずる制度

介護の短時間勤務制度については、育児の場合のように「1日6時間」と一律に決められているわけではありません。

例えば、次のような制度設計が可能です。

  • 1日の所定労働時間を短縮する
  • 週または月の所定労働時間を短縮する
  • 週または月の所定労働日数を減らす
  • 従業員が勤務しない日や時間を個別に請求できるようにする

対象家族1人につき、利用開始日から連続する3年以上の期間で、2回以上利用できる制度にする必要があります。

また、要介護状態にある家族を介護する従業員がテレワークを選択できるようにすることは、会社の努力義務です。

育児・介護以外を理由とする短時間勤務

本人の治療、学び直し、地域活動、ボランティア活動などを理由とする短時間勤務は、原則として法律上の義務ではありません。対象者、利用期間、賃金の計算方法、申請手続きなどを就業規則や社内規程に定めることで、福利厚生や採用競争力の向上につなげられます。

テレワーク・在宅勤務

テレワークは原則として会社の任意制度

一般的なテレワークや在宅勤務について、すべての会社に一律の導入義務があるわけではありません。

ただし、厚生労働省は「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を公表しており、テレワークを導入する会社に対して、適切な労務管理を求めています。

また、3歳以上で小学校就学前の子を養育する従業員に対する「柔軟な働き方を実現するための措置」の一つとして、会社がテレワークを選択することもできます。

労働時間を適切に管理する

テレワーク中であっても、労働基準法は通常どおり適用されます。

会社は、始業・終業時刻や休憩時間を把握し、時間外労働、休日労働、深夜労働を適切に管理しなければなりません。

法定時間外労働や法定休日労働をさせる場合には、テレワークであっても36協定の締結・届出や、割増賃金の支払いが必要です。

費用負担のルールを明確にする

テレワークでは、次のような費用が発生することがあります。

  • パソコンや周辺機器の購入費
  • インターネット通信費
  • 電話料金
  • 水道光熱費
  • 文具や消耗品の費用
  • 郵送・宅配費用

これらを会社と従業員のどちらが、どのような方法で負担するのかを、導入前に明確にしておくことが重要です。

会社が従業員に通信費や作業用品などの費用を負担させる場合、就業規則の作成義務がある事業場では、その内容を就業規則やテレワーク勤務規程に定める必要があります。

就業規則の作成義務がない事業場であっても、従業員に費用を負担させる場合には、労使で合意し、できる限り書面で確認することが望まれます。

中抜け時間の取り扱いを決める

テレワーク中に、子どもの送迎や通院などのため、一時的に業務から離れることがあります。

このような「中抜け時間」については、例えば次のような取り扱いが考えられます。

  • 休憩時間として扱い、終業時刻を繰り下げる
  • 時間単位の年次有給休暇として扱う
  • 中抜け時間を把握せず、始業から終業までの時間から通常の休憩時間だけを控除して労働時間とする

どの方法を採用するかは、あらかじめ就業規則やテレワーク勤務規程などで明確にしておくことが重要です。

安全衛生と健康管理

テレワーク中の従業員についても、会社には安全衛生や健康管理に配慮する責任があります。

長時間労働や孤立を防ぐため、次のような対応が考えられます。

  • 定期的なオンライン面談
  • 作業環境に関するチェックリストの活用
  • 長時間労働の把握と是正
  • メンタルヘルス相談窓口の案内
  • 業務時間外の連絡ルールの整備

オフィス以外で働いているからといって、会社の安全配慮が不要になるわけではありません。

育児休業

対象者と取得期間

育児休業は、原則として1歳未満の子を養育する労働者が取得できる制度です。

男性・女性のどちらも対象となり、原則として2回まで分割して取得できます。

保育所に入所できないなど一定の事情がある場合には、子が1歳6か月または2歳になるまで延長できる場合があります。

要件を満たした従業員から適法な申出があった場合、会社は原則として育児休業の取得を拒むことができません。

ただし、労使協定を締結することで、継続雇用期間が1年未満の従業員や、週の所定労働日数が2日以下の従業員などを対象外にできる場合があります。

育児休業給付金

一定の要件を満たす雇用保険の被保険者には、育児休業給付金が支給されます。

給付率は、原則として次のとおりです。

  • 育児休業開始から180日目まで:休業開始時賃金の67%
  • 181日目以降:休業開始時賃金の50%

支給額には上限があり、休業中に会社から賃金が支払われた場合には、減額または不支給となることがあります。

出生後休業支援給付金

2025年4月から、出生後休業支援給付金が設けられています。

子の出生直後の一定期間に、原則として両親がともに14日以上の育児休業を取得するなどの要件を満たした場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が追加で支給されます。

通常の育児休業給付等と合わせた給付率は80%となり、社会保険料免除や給付金が非課税であることを考慮すると、手取り額に近い水準となるよう設計されています。

一人親の場合や、配偶者が自営業者である場合など、配偶者の育児休業取得が要件とならないケースもあります。

育児時短就業給付金

2025年4月から、育児時短就業給付金も設けられています。

2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮し、賃金が低下するなどの一定の要件を満たした場合、原則として時短勤務中に支払われた賃金の10%相当額が支給されます。

ただし、賃金と給付金の合計が時短勤務開始前の賃金を超えないよう、給付率が調整されます。

介護休業

対象者と取得期間

介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために取得する休業です。

対象となる家族は、次のとおりです。

  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

対象家族1人につき、通算93日まで、3回に分けて取得できます。

例えば、30日、30日、33日のように、介護の状況に応じて分割することが可能です。

介護休業は、従業員自身が介護に専念し続けるためだけの制度ではありません。

地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談、介護サービスの手配、家族内での役割分担など、仕事と介護を両立する体制を整えるための期間として活用することが重要です。

介護休業給付金

一定の要件を満たす雇用保険の被保険者には、介護休業給付金が支給されます。

主な要件は次のとおりです。

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 介護休業開始前2年間に、原則として被保険者期間が12か月以上あること
  • 休業中に支払われる賃金が、休業開始時賃金の80%未満であること

給付額は、原則として休業開始時賃金日額の67%相当額です。

休業中に賃金が支払われた場合は給付額が調整され、一定額以上の賃金が支払われた場合には給付されません。

介護休暇

介護休暇は、対象家族の通院への付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせなど、短期間の対応に利用できる休暇です。

取得できる日数は、次のとおりです。

  • 対象家族が1人の場合:年5日まで
  • 対象家族が2人以上の場合:年10日まで

1日単位だけでなく、時間単位でも取得できます。

介護休業が、介護体制を整えるための比較的まとまった休業であるのに対し、介護休暇は日常的・突発的な対応に利用する制度と考えると分かりやすいでしょう。

介護休暇を有給とするか無給とするかは、法律上は会社の定めによります。

介護離職を防ぐための会社の義務

2025年4月から、介護離職防止のための会社の対応が強化されています。

雇用環境の整備

会社は、介護休業や介護両立支援制度を利用しやすくするため、次のうち1つ以上の措置を講じなければなりません。

  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修
  • 相談窓口などの相談体制の整備
  • 自社における制度利用事例の収集・提供
  • 制度利用を促進する会社方針の周知

法律上は1つ以上ですが、複数の措置を実施することが望ましいとされています。

介護に直面した従業員への個別周知・意向確認

従業員から家族の介護に直面した旨の申出があった場合、会社は個別に次の事項を周知し、制度利用の意向を確認しなければなりません。

  • 介護休業や介護両立支援制度等の内容
  • 制度の申出先
  • 介護休業給付金

取得を控えさせるような説明や意向確認は認められません。

40歳前後の従業員への情報提供

会社には、従業員が介護に直面する前の早い段階で、介護休業制度などについて情報提供する義務があります。

情報提供を行う時期は、次のいずれかです。

  • 従業員が40歳に達する日の前日が属する年度
  • 従業員の40歳の誕生日から1年間

情報提供する内容は、介護休業・介護両立支援制度等の内容、申出先、介護休業給付金などです。

子の看護等休暇

子の看護等休暇は、小学校3年生を修了するまでの子を養育する従業員が取得できる休暇です。

取得できる日数は、次のとおりです。

  • 対象となる子が1人の場合:年5日まで
  • 対象となる子が2人以上の場合:年10日まで

1日単位または時間単位で取得できます。

取得できる事由

子の看護等休暇は、次のような場合に取得できます。

  • 子の病気やけがの看護
  • 子の予防接種や健康診断
  • 感染症に伴う学級閉鎖等への対応
  • 入園式への参列
  • 卒園式への参列
  • 入学式への参列

運動会、授業参観、保護者会など、すべての学校行事が法定の取得事由になるわけではありません。

会社が法定の範囲を超えて、独自に対象行事を追加することは可能です。

要件を満たす従業員から申出があった場合、会社は原則として休暇を与えなければなりません。

ただし、有給とするか無給とするかは、会社が就業規則などで定めることができます。

副業・兼業

副業・兼業の法的な位置づけ

法律上、労働者の副業・兼業を一律に禁止する規定が設けられているわけではありません。

厚生労働省は、労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に労働者の自由であるという裁判例などを踏まえ、企業に対して、副業・兼業を原則として認める方向で検討することが適当としています。

厚生労働省のモデル就業規則でも、従来の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除され、副業・兼業に関する規定が設けられています。

ただし、すべての副業を無条件に認めなければならないわけではありません。

会社が副業を制限できる場合

次のような事情がある場合、会社は副業・兼業を禁止または制限できる可能性があります。

  • 本業への労務提供に支障がある場合
  • 長時間労働によって健康に悪影響が生じるおそれがある場合
  • 企業秘密が漏えいするおそれがある場合
  • 会社の名誉や信用を損なう行為がある場合
  • 競業によって会社の正当な利益を害する場合

禁止や制限を行う場合は、具体的な事情に基づいて合理的に判断する必要があります。

労働時間の通算

本業と副業の両方が雇用契約であり、いずれも労働基準法上の労働時間規制が適用される場合、原則として両方の労働時間を通算します。

会社は、従業員からの申告などをもとに、副業先の労働時間を把握することになります。

一方、副業が次のような形態である場合は、原則として労働基準法上の労働時間として通算しません。

  • フリーランス
  • 個人事業主
  • 業務委託
  • 請負契約
  • 委任契約
  • 自ら経営する事業

副業先が雇用契約なのか、業務委託契約なのかによって、会社の労働時間管理が異なる点に注意が必要です。

また、割増賃金の支払義務をどちらの会社が負うかは、労働契約の先後や、実際に労働した順序などによって判断されます。

就業規則と届出制度の整備

副業・兼業を認める場合は、届出制や申告制を設けることが一般的です。

就業規則には、例えば次の事項を定めます。

  • 届出が必要となる副業の範囲
  • 届出の時期と方法
  • 副業先の業務内容
  • 副業先での勤務時間
  • 副業を禁止・制限できる事由
  • 情報管理や秘密保持
  • 健康管理に関するルール
  • 届出内容に変更があった場合の手続き

許可制とする場合も、会社の裁量だけで恣意的に不許可とするのではなく、明確な基準に基づいて判断することが重要です。

柔軟な働き方支援を整えるメリット

柔軟な働き方支援は、適切に設計・運用することで、次のような効果が期待できます。

採用競争力の向上

育児や介護をしながら働く人、場所や時間にとらわれない働き方を希望する人にとって、柔軟な制度は企業選びの重要な要素となります。

離職の防止

育児、介護、治療などの事情が生じたときに、退職以外の選択肢を用意できます。

経験のある人材の離職を防ぐことは、採用や育成にかかるコストの抑制にもつながります。

生産性の向上

働く時間や場所を柔軟に選べることで、通勤負担が軽減されたり、業務に集中しやすくなったりする可能性があります。

ただし、制度を導入するだけで自動的に生産性が上がるわけではありません。業務分担、評価方法、コミュニケーション方法なども併せて見直す必要があります。

助成金を活用できる可能性

一定の要件を満たす中小企業は、両立支援等助成金を受給できる可能性があります。

2026年度には、育児を行う従業員のために法定を上回る柔軟な働き方の制度を導入し、実際に制度利用を支援した事業主などを対象とするコースが設けられています。

まとめ

柔軟な働き方を支援する制度には、法律上の義務として整備しなければならないものと、会社が任意で導入できるものがあります。

特に、2025年の育児・介護休業法改正により、次のような会社の対応が強化されています。

  • 3歳から小学校就学前の子を養育する従業員に対する柔軟な働き方の整備
  • 子が3歳になる前の個別周知・意向確認
  • 介護離職防止のための雇用環境整備
  • 介護に直面した従業員への個別周知・意向確認
  • 40歳前後の従業員への介護制度の情報提供
  • 子の看護等休暇の対象年齢・取得事由の拡大

まずは、自社の制度が最新の法律に対応しているかを確認しましょう。

そのうえで、法定制度を整備するだけでなく、従業員が実際に利用しやすい申請方法、業務分担、評価制度、職場風土まで含めて設計することが大切です。

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よくあるご質問

  • 育児休業は正社員以外も取得できますか?

    有期雇用労働者も取得できます。現在の要件は「子が1歳6ヶ月になる日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」のみです。ただし、労使協定により「継続雇用期間が1年未満の労働者」を対象外とすることは可能です。

  • 男性の育児休業取得は義務ですか?

    取得自体は従業員の権利であり、会社が取得を強制することはできません。ただし、従業員規模300人超の企業は育児休業取得率の公表が義務です。

  • テレワーク中の通信費は会社が負担しないといけませんか?

    法律上の義務はありませんが、就業規則または個別合意で負担ルールを明確にすることが推奨されています。負担しない場合も、その旨をあらかじめ明示しておく必要があります。

  • 副業を禁止している就業規則はそのまま有効ですか?

    現行の裁判例や厚労省の方針では、副業・兼業を一律禁止することは原則として認められない方向にあります。ただし、競業避止や秘密保持の観点から合理的な制限は可能です。

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