子ども・子育て支援金、会社負担はいくら増えるか(2026年4月施行)
【2026年5月から給与天引き開始】
「独身税」の俗称で話題になっている子ども・子育て支援金制度が、2026年4月にスタートしました。
報道では、個人負担を中心に取り上げられることが多い制度ですが、労使折半で徴収されるため、会社にも一定の負担が発生します。負担する料率は令和8年度の0.23%でスタートし、令和10年度には約0.4%まで段階的に引き上げられる予定です。
本記事では、子ども・子育て支援金の制度概要、規模別の会社負担額、給与計算実務の対応ポイントを、会社視点で整理します。
目次
子ども・子育て支援金とは|「独身税」の正体と制度の全体像
子ども・子育て支援金は、児童手当の抜本的拡充など少子化対策の財源として、2026年4月から新設された社会保険料です。SNSなどで「独身税」と呼ばれることがありますが、これは俗称であり、独身者だけに課される税ではありません。
制度の根拠は、2024年6月に成立した改正子ども・子育て支援法です。健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度のすべての加入者から、医療保険料に上乗せする形で徴収します。所管はこども家庭庁、料率は国が一律で示します。
押さえておきたい点は2つです。
- 1 被用者保険(協会けんぽ・健保組合・共済組合)に加入する従業員の支援金は労使折半で徴収されるため、健康保険料と同じく会社負担が発生する。
- 2 支援金率は令和10年度にかけて段階的に引き上げられる、年度ごとに料率が変わる。
「独身税」という呼称は批判的な文脈で広まりましたが、こども家庭庁のFAQでも明示されているとおり、扶養配偶者・子ども・高齢者を含む全世代が制度の対象です。給与明細上は健康保険料とは別項目で表示されることが一般的なため、2026年4月以降は従業員から問い合わせが入る可能性があります。
子ども・子育て拠出金との違い
子ども・子育て支援金は、健康保険法に法定された社会保険料です。協会けんぽ・健保組合などの被用者保険では、標準報酬月額に「支援金率」を乗じた金額を、事業主と被保険者で折半して負担します。
令和8年度の支援金率は0.23%で、被用者保険については国が全国一律の料率を示しています。
労使それぞれの負担は0.115%ずつです。介護保険料のように年齢区分はなく、被保険者全員が対象です。扶養家族(被扶養者)は直接の負担対象ではありません。
名称が似ている既存制度「子ども・子育て拠出金」とは別物です。両者の違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | 子ども・子育て支援金 | 子ども・子育て拠出金 |
|---|---|---|
| 開始時期 | 2026年(令和8年)4月〜 | 2015年〜(既存制度) |
| 負担者 | 被保険者と事業主の折半 | 事業主のみ(被保険者負担なし) |
| 料率(R8年度) | 0.23%(国一律) | 0.36% |
| 料率の付加対象 | 健康保険料 | 厚生年金保険料 |
| 主な使途 | 児童手当拡充・通園制度等(加速化プラン) | 保育所運営費・子育て支援事業 |
2026年4月以降、貴社では子ども・子育て拠出金(厚生年金保険料に付加・事業主のみ負担)に加えて、子ども・子育て支援金(健康保険料に上乗せ・労使折半)を別途控除することになります。給与計算ソフトの設定変更時には、両者を取り違えないよう注意してください。
開始時期と料率|2026年4月開始、令和10年度に約0.4%へ段階引上げ
子ども・子育て支援金は、令和8(2026)年4月分の保険料から徴収が始まりました。多くの企業は社会保険料を翌月控除する運用のため、給与明細に初めて反映されるのは2026年5月支給給与からとなります。当月控除の運用をしている企業では、4月支給給与から控除が始まっています。
支援金率は令和10年度にかけて段階的に引き上げられます。法律上、令和10年度に約1兆円規模で上限が確定する設計のため、それ以降に無制限に増えるわけではありません。
| 年度 | 支援金率(被用者保険) |
|---|---|
| 令和8年度(2026年度) | 0.23% |
| 令和9年度(2027年度) | 約0.3% |
| 令和10年度(2028年度) | 約0.4% |
実務上、注意点が1つあります。健康保険料率の改定と支援金率の徴収開始で1ヶ月のずれがある点です。協会けんぽの令和8年度健康保険料率は3月分(4月納付分)から改定されていますが、支援金は4月分(5月納付分)からの徴収となります。給与計算ソフトの設定を2段階で更新するケースが多いため、給与計算担当者には事前にスケジュールを共有しておくと混乱が避けられます。
なお、令和9年度・10年度の料率はそれぞれの年度で政府が正式決定します。現時点で示されている試算は段階引上げの目安です。
会社負担はいくらか|従業員規模別の年間試算
会社負担の支援金額は、以下の計算式で算定します。
会社負担の支援金月額 = 標準報酬月額 × 0.23% × 1/2
例えば標準報酬月額が30万円の従業員の場合、会社負担は月額345円(30万円×0.23%÷2)、年間4,140円です。
以下は、令和8年度(支援金率0.23%)時点での、規模別の年間会社負担増の早見表です。標準報酬月額は30万円を仮定しています。
| 従業員数 | 月額会社負担(全社) | 年間会社負担(全社) |
|---|---|---|
| 10名 | 約3,450円 | 約41,400円 |
| 50名 | 約17,250円 | 約207,000円 |
| 100名 | 約34,500円 | 約414,000円 |
| 500名 | 約172,500円 | 約2,070,000円 |
| 1,000名 | 約345,000円 | 約4,140,000円 |
参考までに、令和10年度に支援金率が約0.4%まで引き上げられた場合、同条件(月給30万円、従業員50名)での試算は年間約36万円となります。
賞与からも徴収されます。標準賞与額(賞与額から1,000円未満を切り捨てた額)に対して支援金率0.23%を乗じ、労使折半します。年2回・各60万円の賞与を支給する場合、賞与からの会社負担は年間約1,380円(60万円×0.23%÷2×2回)です。
法定福利費全体の中での位置づけも見ておきましょう。
標準報酬月額30万円・東京都の協会けんぽの場合、令和8年度の社会保険料における会社負担(健康保険+厚生年金+介護+雇用+労災+子ども・子育て拠出金+子ども・子育て支援金)は、月額約4万5千円前後となります。
なお、選択制確定給付企業年金(DB)などの制度を導入している企業では、従業員が拠出した金額が標準報酬月額の算定対象外となるため、支援金の算定基礎も連動して圧縮されます。詳細は下記の記事もあわせてご覧ください。
協会けんぽ料率改定との関係
2026年4月は、子ども・子育て支援金の新設に加えて、協会けんぽの健康保険料率改定も同時に実施されました。給与計算実務の観点から、両者を併せた変化を整理しておくと全体像が掴みやすくなります。
健康保険料は引き下げ、支援金は新設という構図です。料率の合算で見ると、健康保険料率0.1%引下げに対し、支援金率0.23%新設のため、保険料率合計は前年度比で0.13%の引上げとなります。
| 料率項目 | 改定内容 | 適用開始 |
|---|---|---|
| 健康保険料率(全国平均) | 10.0% → 9.9%(0.1%引下げ) | 令和8年3月分(4月納付分) |
| 介護保険料率(全国一律) | 1.62%(据え置き) | 令和8年3月分(4月納付分) |
| 子ども・子育て支援金率 | 0.23%(新設) | 令和8年4月分(5月納付分) |
ただし、影響額は都道府県によって異なります。協会けんぽの健康保険料率は都道府県支部ごとに設定されており、令和8年度は40道府県で引き下げ、7県(青森・秋田・山形・栃木・神奈川・島根・沖縄)で据え置き、引き上げは実施されていません。
給与計算実務の対応|控除欄追加・賞与徴収・育休中の取扱い
子ども・子育て支援金の徴収開始は、給与計算実務上でも対応が必要です。給与計算担当者と早めに認識を合わせるべき主な実務ポイントは次のとおりです。
給与明細の控除欄
子ども・子育て支援金は、健康保険料とは別項目として給与明細に表示するのが一般的です。
協会けんぽの令和8年度保険料額表でも「子ども・子育て支援金」の欄が新設されています。
給与計算ソフトの多くは、2026年3月から4月にかけてアップデートが提供されているため、自社のソフトが対応済みかを確認してください。給与明細フォーマットを自社で管理している場合は、控除欄の追加が必要です。
賞与からの徴収
賞与からも、月給と同様に労使折半で支援金が徴収されます。
標準賞与額(賞与額から1,000円未満切捨て)に対して0.23%を乗じ、会社と従業員が0.115%ずつ負担する仕組みです。賞与計算ソフトの設定変更も忘れずに行ってください。
育休中・産休中の取扱い
健康保険法上、育児休業期間中および産前産後休業期間中は、健康保険料および厚生年金保険料が事業主の届出により免除されます。
子ども・子育て支援金も健康保険料と同じ仕組みで徴収されるため、同様に免除対象となります。育児休業等取得者申出書を年金事務所等に提出している場合、特段の追加手続きは不要です。
端数処理
支援金額に1円未満の端数が生じた場合の処理は、健康保険料と同じく「50銭以下切捨、50銭超切上」が原則です。
健保組合に加入している場合は、健保組合の運用ルールに従ってください。
控除タイミングの確認
社会保険料の控除を「当月控除」「翌月控除」のいずれで運用しているかにより、支援金の徴収開始月が変わります。
翌月控除の場合は5月支給給与から、当月控除の場合は4月支給給与からの控除開始です。自社の運用ルールを再確認しておくと、従業員への案内時に齟齬が生じません。
| 確認項目 |
|---|
| 給与計算ソフトのアップデート状況確認 |
| 給与明細の控除欄「子ども・子育て支援金」追加 |
| 控除開始月(4月支給/5月支給)の確認 |
| 賞与計算への支援金率反映 |
| 育休・産休中従業員の免除届出状況確認 |
| 健保組合の運用通知(端数処理等)確認 |
| 従業員への事前通知文の準備 |
従業員から「独身税」について質問されたら
子ども・子育て支援金は俗称「独身税」として広く報道されたため、給与明細を見た従業員から質問が寄せられることがあります。経営者・人事労務担当者として、説明の押さえどころを整理しておくと案内がしやすくなります。
説明のポイントは3つです。
1つ目は、制度の正式名称と趣旨です。
「独身税」は俗称であり、正式名称は子ども・子育て支援金です。児童手当の拡充、出産・子育て応援給付、こども誰でも通園制度などの財源として活用されることを伝えます。こども家庭庁のFAQでも「支援金は独身税ではない」と明示されています。
2つ目は、負担対象です。
独身者だけに課される税金ではなく、公的医療保険に加入するすべての人(被扶養配偶者を除く)が対象です。子の有無、婚姻の有無に関わらず、被保険者本人が対象となります。被扶養配偶者は直接の負担対象ではないため、共働き世帯と片働き世帯で世帯としての負担総額が異なる点も、質問が出やすいポイントです。
3つ目は、給与明細上の項目と控除のタイミングです。
「健康保険料とは別項目で表示される」「翌月控除の運用なら5月支給給与から」など、自社の運用に即した具体的な情報を伝えると、従業員の理解が早まります。
法律上、従業員への事前通知は義務ではありません。給与明細に新しい控除項目が突然追加されると問い合わせが入る可能性があるため、4月の給与計算前に社内通知文または朝礼・社内掲示等で簡単に共有しておくのも一案です。
まとめ|2026年4月の制度開始で押さえるポイント
子ども・子育て支援金は、2026年4月分保険料から始まる新たな社会保険料です。料率は令和8年度0.23%でスタートし、令和10年度には約0.4%まで段階的に引き上げられる見通しで、健康保険料と同様に労使折半で徴収されます。
経営者として把握しておきたい点を3つにまとめます。
1 会社負担は標準報酬月額の0.115%相当で、社会保険料全体に占める比率は限定的なこと。
2 令和8年度は協会けんぽ料率の引下げと同時改定のため、両者を併せて見ると全体像が分かりやすいこと。
3 給与計算実務(控除欄追加・賞与徴収・育休中の免除届出・従業員説明)は、4月の給与計算前に給与計算担当者と整理しておくとスムーズなこと。
制度の数字を把握し、給与計算担当者への共有と従業員からの問い合わせへの備えがあれば、特別な経営対応は必要ありません。役立つ情報の一つとして頭に入れておくとよいでしょう。

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よくあるご質問
子ども・子育て支援金は令和9年度以降どうなりますか?
政府の試算では、令和9年度に約0.3%、令和10年度に約0.4%まで段階的に引き上げられる見通しです。
令和10年度に約1兆円規模で上限が確定する設計となっており、それ以降に無制限に増える仕組みではありません。
料率の正式決定はそれぞれの年度で行われます。パート・アルバイトの従業員も対象ですか?
健康保険(被用者保険)に加入しているパート・アルバイト従業員は、支援金の徴収対象です。
社会保険適用拡大の対象となり加入しているパート従業員(週20時間以上勤務など)も対象です。
健康保険の被扶養者として加入している配偶者は直接の負担対象ではありません。役員報酬から支援金は控除されますか?
役員(代表取締役を含む)が健康保険の被保険者である場合、標準報酬月額に応じて支援金が控除されます。
育児休業中の従業員からも徴収する必要がありますか?
育児休業期間中および産前産後休業期間中は、健康保険料と同様に、子ども・子育て支援金も事業主の届出により免除されます。
育児休業等取得者申出書を年金事務所等に提出済みであれば、特段の追加手続きは不要です。給与明細にどのように記載すればよいですか?
健康保険料とは別項目として、「子ども・子育て支援金」の欄を新設するのが一般的です。
協会けんぽの令和8年度保険料額表でも、健康保険料・介護保険料とは別欄で表示されています。
給与計算ソフトの多くは2026年3〜4月にアップデートが提供されているため、自社のソフトの対応状況を確認のうえ、表示形式を決定してください。










